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HDD のさらなる大容量化に向けて

HDDの容量単価を抑えた大容量化について

磁化する極小箇所にマイクロ波や熱をかけることで従来より低い記録磁界で媒体を磁化させる技術を各HDDメーカーが進めている。が、ここではその詳細に触れず、それとは違う側面からのアプローチで容量単価を抑えた大容量化を提案する。

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本ページに記載された技術情報は記事が出稿された時期に応じて推奨システムに対する考え方や実現方法が書かれています。
したがって、最新技術でのシステム構築を前提とし、この情報を利用する場合、その記事が時代に沿わない内容となる事もありますので予めご了承ください。

HDD の容量増加がムーアの法則からはずれていると言われだして久しい。これは磁気記録の技術がそろそろ限界に近付いている事に他ならない。
ノートブックやタブレットの多くは既にHDD からSSDに置き換えられている。パソコンやサーバ搭載のHDDも順次SSDに置き換えられてゆくだろう。一方で大容量ストレージの領域はSSD では未だ価格が合わず、アーカイブやバックアップなどアクセス頻度の低いものはTape でもカバーできるだろうが、そこそこアクセスがある場合、まだまだHDD に置き換わるものはないと思われる。
ただし、SSDとの価格競争は継続的に続き、HDDの大容量化が止まってしまえばいずれは大容量でも逆転が起こるだろう。HDDメーカ各社はMAMR(Microwave Assisted Magnetic Recording)やHAMR(Heat Assisted Magnetic Recording)などの新しい技術開発を進めている。これは磁化する極小箇所にマイクロ波や熱をかけることで従来より低い記録磁界で媒体を磁化させる技術である。MAMR やHAMR は歓迎する技術であるがここではその詳細に触れず、それとは違う側面からのアプローチで容量単価を抑えた大容量化を提案する。

記録密度の計算

Seagate社の3.5インチ16TBのHDDの仕様書に記載されている内容を参考に大まかな計算をしてみよう。

記録密度の計算

仕様書のRead/write data heads=18よりディスクが9枚搭載されていることがわかる。
ディスク1枚当たりだと1.477TB、片面だと889GBの容量という計算になる。(Bytes/surface=889,000MB)。
また、Tracks/surfaceとTracks/inの数値より使われている半径方向の長さは1.151 インチ(29.25mm)であることがわかる。
3.5インチは直径なのでディスクの半径は1.75インチ、44.45mmであるがヘッドスライダーの横幅やヘッドのロード/アンロードする領域のために最外周3mm程は記録しない領域として、最外周のTrack半径は41.45mm。そこから29.25 ㎜を引いた半径12.2 ㎜がTrack の最内周という計算になる。これは円盤同士を積み重ねるためのスペーサ及び最上部から全ディスクをモータに固定するトップクランプが内周にあって使えないためである(図1)。

図1、図2

そこで図2にあるとおりドーナツ状のデータが記録される半径41.45mmから12.2㎜で囲われた部分の面積を求めると
41.45^2xπ‐ 12.2^2xπ= 4930mm^2となり面当たりの容量は889GBなので記録密度は0.180GB/mm^2、ビット、インチ換算すると930Gb/in^2となる。
仕様書にあるAreal density は1028 Gb/in^2で同じくTPIとBPIから算出した記録密度は423,000(TPI)x2,362,000 (BPI)=999Gb/in^2でこの計算とは多少異なるがここでは930Gb/in^2としておこう。

*注)総面積から記録密度を算出したが実際のTrack内にはTrack 番号やセクター番号さらにはヘッドが読み書きする際にその場所にとどまるためのサーボ情報が埋め込まれていてユーザデータとして使えない領域がある。従ってユーザデータとして使える記録面積は先に計算した数値より小さくなり記録密度は高くなる。

提案

そこであえて提案したいのは3.5インチフォームファクターにこだわるな、という事である。
先に計算した円の面積(記録領域)は半径を大きくするとその2乗で大きくなっていくことがわかる。
(図3)

図3

そこで3.5 インチHDDが出る前に主流だった5.25インチのディスクで最外周、最内周について先の計算と同じ数値を使って記録容量を算出してみよう。実効の記録領域は半径12.2mmから63.67mmでその面積は12,268mm^2。これは3.5インチディスクの約2.5倍で先に求めた記録密度(0.180GB/mm^2)を掛けると2,212GBになる。これが片面の容量なので両面で同じく9ディスク積みにすると一挙に約39.8TBになる。
さらに8インチのディスクで計算してみよう。同様の計算で実効の記録領域は12.2mm から98.6mmでその面積は30,074mm^2となる。直径を3.5インチから8 インチと約2.3 倍にしたら有効面積は約6.1倍になるのである。
これに記録密度を掛けると5,423GB、両面で9枚積みにすると一挙に97TBになる。記録密度を変えることなく、すなわち同じ磁気記録技術を使って容量が6.1倍となる。
もちろん3.5インチのまま2倍の高さ(ダブルハイト)にしてディスクを倍の18枚搭載すれば容量も倍の32TBになる。しかしこの形態ではディスクや磁気ヘッドの数を減らせないので2倍の容量増加に対してのコストメリットがあまり期待できない。一方でディスクの大口径化はざっくり言ってしまえば部品の点数は同じで大きさが変わるだけなので仮に容量が6.1倍になったとすると容量当たりのコストは大幅にカットされるだろう。
大口径化のメリットはコストや容量だけではない。ディスクは回転しているので角速度(Angular Velocity)は一定だが線速度(Liner Velocity)は外周に行くほど早くなり、同じ記録密度だと外周に行くほど一定時間の読み書き量が増える、即ち読み書きのスピードが上がる。ちなみに8インチディスクの外周は3.5インチディスクのそれより2.3倍長いので結果的に最大2.3倍シーケンシャルの性能も向上する計算になる。逆に回転数を落とし同じ磁気記録技術でも記録密度を上げることが可能になるかもしれない。

まとめ

HDD はダウンサイズされ、最も小さいものは0.8インチのものまで現れ、現在大容量のHDD としては3.5インチが主流になっている。過去のHDDは一般に磁気ディスク装置と呼ばれていて記録容量も現在のそれとは比較にならないぐらいの小さいものだったが、当時は数十インチのディスクを使っていた。前述のとおりディスクを大口径にすることで大容量で安価なHDDを作ることが可能であるので例えば8 インチに回帰したとしてもおかしな話ではないのではないか。もちろん3.5インチのHDDのように多ディスクを同じスペースで積載できるか、記録密度がそのまま適用できるかどうかなどチャレンジはある。ただ流体ベアリングモータやヘリウム充填、ガラスディスクなど過去の磁気ディスク装置の時代になかった新しい技術も適用可能である。
ただその他の障壁も高いのも確かではある。ベース、ディスク、スピンドルモーター、アクチュエータなどほぼ全ての部品が変わってしまうのでHDDの部品メーカが追従しないといけない、もちろん自身のHDD生産設備も大きな改修が必要になる。またHDDを搭載する製品側も今までの筺体に収まらなくなるので大変だ。ただ、当社はそうなれば対応するつもりでいる。97TBの8インチHDDを10台ストライプして1PB級の大容量筺体などを作ってみたいものである。

最後に

前述のMAMRやHAMR技術が確立すればその技術を使いディスクを大口径化すればよい。SMR(shingled magnetic recording)で容量を微増させるアプローチがあるがそれも適用可能である。
97TB の容量はLTOのロードマップと比較しても十分大容量だしランダムアクセスに優れるSSDと比較するとコストパフォーマンスで大きく水をあけられるはずである。このままLTOやSSDに立ち位置を奪われ衰退していくか、HDDの優位性を維持できるかHDDメーカのどこかがチャレンジしてくれないものだろうか。

(2020年5月掲載)

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