NTC Newtechデータで未来をつなぐ

ストレージの基本はバックアップからお客様へのバックアップ関連コラムをご紹介します。

本ページに記載された技術情報は記事が出稿された時期に応じて推奨システムに対する考え方や実現方法が書かれています。
したがって、最新技術でのシステム構築を前提とし、この情報を利用する場合、その記事が時代に沿わない内容となる事もありますので予めご了承ください。

 

RAID装置でハードウェアに故障対策しても、データの消失はRAID装置が関与できない人為的な誤操作もハードウェア障害に匹敵するほど多く、その他にもソフトウェアのバグやネットワークトラブル、コンピュータウィルスなど様々な原因があります。 現在のように、コンピュータを中心としてビジネスが成り立つ社会では、データの消失は企業の存続をも左右するほど大きな問題で、それだけに重要視しなければなりません。

 

なぜバックアップが必要なのか

データの消失につながる原因は様々ですが、そもそも実体のないデータを保護するには、ハードウェア障害への対処だけでは十分とはいえません。データは日々刻々と動的に更新され、そのオペレーションでも思い違いによるデータ削除、ソフトウェアトラブルによるデータ消滅の危機にさらされているのが実態です。したがって、RAID装置のようにハードウェア障害への対策をいくら行なっても、真にデータを保護する方法はデータをバックアップする以外にありません。

 

動的なメディアと静的なメディア

バックアップには、ハードディスクなどのように常にコンピュータとオンライン状態で存在する動的なメディアに対し、不必要な時はデータが保存されたメディアを機器から取り外しのできる磁気テープなどの静的なメディアがあります。

動的なメディアは高速なバックアップができる反面、メディアの交換ができませんから、複数のバックアップを取るにはコストがかかりますし、さらに常にメディアそのもののハードウェア障害の危険性を残しています。

これに対し静的なメディアは、メディア部分を装置から取り出して別に保管することができる点と、複数のメディアを交換して複数のバックアップをとることも可能です。

したがって、より質の高いデータ保存を安価なコストで実現できます。バックアップ用として選択されるメディアは、容量とバックアップ速度の点から磁気テープが一般に選択されており、このメディアにも様々な規格があります。

 

磁気テープの駆動方式は2種類

磁気テープの駆動方式には、リニアスキャン方式とヘリカルスキャン方式の二つに分類できます。

リニアスキャン方式は歴史が古く代表的な製品にはDLTがあげられます。歴史が長い分、過去から蓄積された磁気テープとの互換性を前提にするシステムに多く採用されています。テープは単純な経路を通過するだけで記録されるので、テープは何度も繰り返してデータを上書きする耐久性に優れていると一般的に評価されています。

ヘリカルスキャン方式は、テープが回転ヘッドを半周する複雑な経路を通過するために、テープの繰り返し使用に耐久性が低いのではと考えられていましたが、最近は高度なテープテンションコントロールやテープとヘッドの摩擦を最小限に抑えるエアフィルム機構などが搭載されたため、この問題点も解決しているといえます。リニアスキャン方式はトラックの数だけテープが何度も往復してデータを書き込みますから、例えば64トラックあれば最低32往復してデータを書き込むことになります。

つまり、テープがヘッドを擦る回数がヘリカルスキャン方式では最小1パスで済むのに比べ、リニアスキャン方式ではその何倍ものパスが必要になるわけです。このため、テープの耐久性においてはどちらの方式も甲乙つけ難いといえます。

 

ヘリカルスキャンとリニアスキャン
 

テープ装置の種類

DDS

少ない予算で40GB(2:1圧縮時)クラスのバックアップまで可能とします。ヘリカルスキャン方式ならではのコンパクトなメディアを利用しています。

ただし、ヘッド寿命が短いので、毎日のバックアップを必要とするシステムでは、AITやDLT8000クラスの製品の方が適しているといえます。

 

AIT

AIT規格は、ヘリカルスキャン方式で高信頼性・長寿命を実現しているので、サーバ機での毎日の自動バックアップに適しています。AIT-1では70GB、AIT-2では100GB、AIT-3では200GB、AIT-4では400GBの容量までをサポートできます。(容量は2:1圧縮時)

 

DLT

古くからの技術を継承し常に互換性を維持してきたDLTは、これまでバックアップ装置のスタンダードの地位を確保してきました。DLT-8000では80GB(2:1圧縮時)の容量をサポートしています。ヘリカルスキャン方式に比べるとメディアはコンパクトではありません。現在では上位規格のSuperDLTがリリースされています。

 

LTO (Ultrium)

ストレージシステムの容量増加によって、より大きな、より高速なテープバックアップ装置が求められています。しかし、過去の技術との互換性を維持したままでは、将来の要求性能を満たすことが難しくなっています。

そこで将来のニーズへ応えるために、複数のメーカーで新たに提唱した構想がLTOです。リニアテープシステムで、現在ではLTO-3 800GB(2:1圧縮時)がリリースされWORMに対応したメディアも用意されています。

 

テープ装置の導入検討

バックアップを必要とするシステムでは、テープ装置の導入において以下の点を検討する必要があります。

 

予算

一度にバックアップするべき容量の算出が必要です。しかし、300GBのRAIDを使っていれば300GBのテープ装置が必要なのではありません。RAID装置のコラムにも記載したように、バックアップが必要なボリュームとそうでないボリュームがあります。また、ファイル単位のバックアップでは、ファイル毎にヘッダをテープ上に書き込みますから、特に小さなファイルがたくさん存在した場合、目的の総容量がバックアップできない場合もあるので、十分余裕のあるテープ装置の選択が必要です。

 

バックアップするデータの性質を調べる

保存するデータが画像や音声などの圧縮データが多ければ、バックアップ装置内での圧縮は期待できませんから、テープ装置の非圧縮時の総容量を基準にしなければなりません。テープ装置は一般に、その圧縮アルゴリズムにおける平均値を基準に圧縮後の容量を表示しています。(通常2:1圧縮と表示される装置が多い)

 

バックアップできる時間帯の検討

バックアップ処理は、昼間に行なうと通常業務の妨げになることがあります。また、ユーザーが使用中のファイルは、バックアップから除外されるケースが多いので、通常、夜間などの許される時間内にバックアップを起動します。もし、午前1時~午前5時の間を割り当てたら目的の容量を4時間以内にバックアップできなければなりません。 その算出には、テープ装置が1時間にバックアップできる容量を参考にしますが、その表示性能はホストコンピュータやSCSIバスのオーバーヘッドを計算に入れていないので、目標性能の1.5~2倍程度余裕のあるテープ装置を選択する必要があります。

 

バックアップの導入方法を検討

特に重要データを保存するサーバには、スケジュール管理での自動バックアップをお奨めしています。バックアップソフトの導入で、スケジュールやバックアップボリューム設定は様々な構成が可能ですが、これには専門的な知識が必要です。特にソフトウェアとハードウェアを別々に購入してしまうと、動作保証の責任範囲が曖昧になり、運用までのトラブルを自己責任で解決しなければなりません。システム導入には、ハード・ソフトの供給からシステムインストールまで一括サポートできるニューテックに是非ご用命ください。

 

(2001年5月掲載)