NTC Newtechデータで未来をつなぐ

大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構お客様への導入事例をご紹介します。

EvoltuionⅡ SATAを利用したスーパーコンピュータシステムデータ保存

導入されたスーパーコンピュータ

ニューテックでは、高エネルギー加速器研究機構(以下KEK)の計算科学センターに2005年8月からEvotluionII SATA-NAS及びEvoltuionII SATA(オプティカルモデル)のセットを合計で5セット納入しました(1セット10TB 合計50TB)。KEKにて2005年度に導入したスーパーコンピュータ、IBM System Blue Gene Solution 及び HITACHI Super Technical Server SR11000モデルK1から得られる大容量シミュレーションデータの保存のために、既に稼動を開始しております。なお、KEKに導入されたスーパーコンピュータは、59テラフロップス、即ち1秒間に59兆回の浮動小数点演算を行うことができ、現在日本でも最速レベルの性能を持っています。

 

KEK 橋本助教授と松古助手

今回導入したニューテック製品を研究に活用しておられる、素粒子原子核研究所の橋本省二助教授及び松古栄夫助手は、彼らの研究グループの研究を次のように説明します。

 

陽子・中性子を構成するクオーク

「我々のグループでは、陽子や中性子を構成する、クォークと呼ばれる素粒子の間に働く相互作用の研究を行っています。この相互作用は量子色力学(QCD)という理論によって記述されますが、クォーク間に働く力が電磁相互作用などの他の相互作用に比べて大きいために、従来の計算方法では陽子や中性子の性質をQCDから直接導くことは困難でした。例えば、陽子や中性子は3個のクオークから出来ていますが、クオーク3個の質量を足しても、陽子や中性子の質量の2%にしかなりません。陽子・中性子を構成するクオーク残りの98%は、真空中で対生成と対消滅を繰り返す粒子と反粒子に、クォークが真空中を進む際にぶつかりながら進むことによって作られています(この状態を、カイラル対称性が自発的に破れた状態、と呼びます)。このような現象をQCDに基づいて解明するには、数値シミュレーションが唯一の一般的な方法です。そのための理論である格子QCDでは、連続な時間と空間を4次元の格子に近似してその格子上の量を扱いますが、自由度が多いために、必要な計算量は膨大なものとなります。」

 

「世界最先端のシミュレーション研究を推進するために、KEKではスーパーコンピュータを運用してきました。2000年に導入した日立SR8000では、2005年12月の運用終了までの間に計算によって生成されたデータは数10TBになり、スーパーコンピュータシステム付属の2TBの磁気ディスクのみでは収容できなくなりました。このため、大容量のストレージを導入して来ました。2006年3月に稼動を始めた現在のシステムは80TBのストレージを備えていますが、いずれ同じ状況になることは確実です。また、莫大な計算資源を使って作られたデータを出来る限り有効に使うため、データを公開し、様々な研究グループ間で共有しようとする動きが国際的に広がりつつあります。国内では、国立情報学研究所が運営しているSuperSINETを通して、国内のスーパーコンピュータ・サイトの間で高速にデータの転送、共有を行うためのHEPnet-J/scという組織があり、KEKが中心的な役割を果たしています。このようなデータ共有のためにも、大規模ストレージシステムの整備は重要になってきています。ストレージシステムが大規模化するにつれ、長期間の安定稼動と、障害時の対応が迅速かつ容易であることが、機器選定の鍵となってきました。この条件を検討した結果、2005年度よりニューテックの製品を導入することにしました。」(橋本、松古氏)

 

総容量50TBのNASシステム

ニューテック製品導入の大きなポイントとしては、『安定性、耐障害性に強いファイルサーバの必要性』であり、弊社では、発売前であったEvoltuionII SATAの技術的な優位点をアピールすることに注力致しました。RAIDコントローラにディスクアクセスがないとき、バックエンドでハードディスク内のBad Blockをリサーチし、自動的に修復する高度なBad Blockリカバリ機能、障害の兆候が現れたディスクをスペアディスクにコピーしてからリビルドを行うオートリプレイス機能、ハードディスクがクラッシュした際にディスクホルダーが赤く光る視認性の高いLEDの採用は、これまでに導入されてきた他社のRAIDシステムに比べて十分な技術的優位性を持っていると評価して頂きました。これらに加えて、EvoltuionII SATAの開発者であり、当時、第一営業部長であった柴田裕信(現在は、技術部長)との直接ミーティングも、ニューテック製品採用の大きな要因となったようです。上記3点の特徴の他、ミラーユニットをRAID5化する「RAID5+1」の概略説明や、ニューテック製品の今までの変遷や今後の方向性など、直接お会いして伝えさせていただきました。このような開発担当者との打ち合わせは、橋本助教授、松古助手の信頼を得られたのだと考えています。このようにニューテックでは、お客様の直接の声を聞き、製品に反映させる小回りの利く体制を備えています。

 

大学、研究所における、ストレージシステムは、年々大規模化しており、KEKの別グループでは、1PBもの大容量のストレージを導入しております。KEKの事例のようにスーパーコンピュータを駆使した大規模計算や、アーカイブでのストレージの利用は、今後益々、増えていくことが予想されております。

 

KEKは、大型加速器を用いての宇宙の成り立ちや、素粒子・原子核の研究、物質の構造や機能に関する研究等を実施。物質と反物質の非対称性の起源を探る、Bファクトリー実験などを行っています。

高エネルギー加速器研究機構 導入事例

(2006/6/23)

 

関連リンク
SupremacyⅢ RAIDシリーズ
SweeprStorⅣシリーズ